Eさんは31歳の女性。
人間関係が上手くいかないことが、彼女の最大の悩みだった。
友人関係、職場の人間関係、恋愛関係。
どれもが、一定の距離で止まってしまう。
相手と深い繋がりを感じることがない。
むしろ、人間関係が進むにつれ「この人は、本当の私を知らない」という寂しさが増していく。
その結果、Eさんは常に「孤独」を感じていた。
人間関係の中にいるのに、心は孤立している。
そういった矛盾した状態。
「私は、本当のことを話せない癖があるんです」
カウンセリングで、そう言った彼女。
「子どもの頃から、親の顔色を見ながら生きてきた。親が喜ぶことをして、親が怒ることは隠す。そういった習慣が、今も続いているんだと思います」
催眠セッションを通じて、彼女の防衛メカニズムを紐解き始めた。
彼女は幼い頃、親の気分に左右される家庭環境にいた。
親の機嫌が良い日と悪い日で、自分の身の安全さえ脅かされた。
その環境で、彼女が学んだのは「本当の気持ちを隠す」ことだ。
自分の真の感情を出したら、親の怒りを買う。
だから、親が喜ぶキャラクターを演じることで、身を守った。
大人になった今、その防衛メカニズムは必要ない。
でも、習慣は強く、無意識のレベルで続いている。
だから、誰とでも「社交的なEさん」を演じ、本当の自分は隠し続けていた。
その結果が「孤独」だ。
演じている自分を受け入れてくれる人間関係は、本当のEさんを知らない。
だから、一生、心の奥底には「理解されていない」という寂しさが残る。
セッションを通じて、彼女は段階的に「本当の気持ちを出す」ことに取り組み始めた。
最初は恐ろしい。
本当の自分が拒絶されるのではないかという恐怖。
でも、催眠状態で何度も「大丈夫だ」という経験を積み重ねることで、その恐怖は薄れていった。
3ヶ月後、Eさんは親友に本当のことを打ち明けた。
それまで隠していた悩みを、そのまま伝えたのだ。
親友の反応は「何で今まで言ってくれなかったの。私は、そういう君の方が好きだよ」という言葉だった。
その瞬間、Eさんは涙が止まらなくなった。
「本当の自分は拒絶される」という信念が、崩れ落ちた。
むしろ「本当の自分」の方が愛されたのだ。
その後、Eさんの人間関係は劇的に変わった。
相手に本当のことを言えるようになると、人間関係の深さが全く違ってくる。
表面的な付き合いではなく、心の繋がりを感じるようになった。
1年後、Eさんは結婚した。
そのパートナーは「君の本当の部分が好きだから」と何度も言ってくれた。
彼女の人生に、初めて「本当の繋がり」が生まれたのだ。
